空き家になった実家を放置するリスクと5つの選択肢【2023年法改正対応】

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空き家になった実家を放置すると、行政から「管理不全空家」「特定空家」に指定されて固定資産税の軽減特例が外れたり、倒壊・損害賠償・近隣トラブルなどのリスクを負ったりする可能性があり、対処の選択肢は「売却」「賃貸」「解体して土地活用」「管理サービス」「空き家バンク」の5つです。

この記事では、次の内容を順番に解説します。

  • 放置する6つのリスク:行政指定、固定資産税の増額、損害賠償、防犯、近隣トラブル、資産価値の低下
  • 2023年(令和5年)の空家法改正のポイント:放置への行政対応が「特定空家になる前」の段階に前倒しされました
  • 5つの選択肢の比較と決め方:フローチャートで自分に合う道筋を確認できます

総務省の「令和5年住宅・土地統計調査(速報集計)」によると、全国の空き家は900万戸・空き家率13.8%と過去最高を更新し、そのうち賃貸・売却用や別荘などを除いた、いわゆる「使い道が決まっていない空き家」は385万戸にのぼります。親が施設に入った、あるいは亡くなって実家が空き家になったまま「どうするか決めきれない」という状況は、決して珍しいことではありません。決めきれないのは、思い入れがある証拠でもあります。ただし、放置の代償は年々大きくなっています。

目次

空き家の実家を放置するとどうなる?6つのリスク

1. 「特定空家」「管理不全空家」に指定される

空家等対策特別措置法(空家法)では、倒壊のおそれや衛生上の問題など、周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家を「特定空家」として、市区町村が助言・指導→勧告→命令→行政代執行(強制的な解体等)という段階的な措置を取れます。命令に違反すると50万円以下の過料、立入調査を拒むと20万円以下の過料の対象です。

さらに2023年の法改正で、特定空家になる前の段階でも「管理不全空家」として指導・勧告できるようになりました。国土交通省の調査では、改正法施行から2025年3月末までに管理不全空家への指導が3,211件、勧告が378件行われており、「まだ壊れていないから大丈夫」とは言えない状況です。

2. 固定資産税の住宅用地特例が外れる

住宅が建っている土地には「住宅用地特例」が適用され、固定資産税の課税標準が200㎡以下の部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に軽減されています。しかし、特定空家または管理不全空家として勧告を受けると、この特例の対象から外れます。

課税標準の軽減がなくなるため、土地の固定資産税は大幅に増える可能性があります(「最大6倍」と言われるのはこのためですが、実際の税額は負担調整措置などにより物件ごとに異なります。正確な金額は自治体の固定資産税担当課や税理士に確認してください)。

3. 老朽化による事故と損害賠償

人が住まなくなった家は換気や通水がされず、傷みが早く進みます。台風で屋根材が飛んで隣家や通行人に被害を与えた場合、倒壊で道路をふさいだ場合など、所有者は損害賠償責任を問われるおそれがあります。遠方に住んでいても、所有者としての管理責任はなくなりません。

4. 防犯・防災上のリスク

空き家は不法侵入、不法投棄、放火の標的になりやすく、庭木の繁茂や害獣・害虫の住み着きも起こります。郵便物があふれたままの家は「管理されていない家」として狙われやすくなります。

5. 近隣トラブル

雑草や庭木の越境、悪臭、ブロック塀の傾きなどは、近隣住民から自治体への通報につながる典型的な要因です。実家のご近所との関係が悪化すると、将来売却する際の心理的なハードルにもなります。

6. 資産価値の低下

建物は放置期間が長いほど劣化し、リフォームして貸す・住むという選択肢が費用面で難しくなっていきます。「売れるうちに売る・貸せるうちに貸す」判断が遅れるほど、選択肢は狭まり、手残りも減っていくのが実情です。

まずは「今の実家にいくらの価値があるのか」を知ることが、すべての判断の出発点になります。

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2023年の空家法改正で何が変わった?(放置への対応が前倒しに)

2023年(令和5年)6月に公布、同年12月13日に施行された改正空家法のポイントは次のとおりです。

  • 「管理不全空家」の新設:放置すれば特定空家になるおそれのある空き家に対し、市区町村長が指導・勧告できるようになりました。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
  • 緊急代執行制度の創設:危険が切迫している場合、命令などの事前手続きを経ずに行政が解体等を行えるようになりました(2025年3月末までに12件実施)。
  • 財産管理人制度の活用:相続放棄された空き家などについて、市区町村長が裁判所に財産管理人の選任を請求できるようになりました。
  • 活用の後押し:市区町村が「空家等活用促進区域」を定めて用途変更や建替えを促進したり、NPO法人などを「空家等管理活用支援法人」に指定したりする仕組みが整いました。

要するに、行政の関与は「壊れかけてから」ではなく「壊れる前」に始まるようになり、放置のコストとリスクは制度的に引き上げられています。

空き家になった実家はどうすればいい?5つの選択肢を比較

選択肢 向いているケース メリット デメリット・注意点
1. 売却 今後住む予定がない/管理の負担をなくしたい 現金化でき、管理責任・税負担から解放される 思い入れの整理が必要。相場を知らないと安売りのおそれ
2. 賃貸 建物の状態が良く、賃貸需要のある立地 家賃収入を得ながら所有を続けられる リフォーム費用や管理の手間。借り手がつかないリスク
3. 解体して土地活用 建物の傷みが激しい/土地の立地が良い 倒壊リスクがなくなり、駐車場等の活用も可能 解体費用がかかり、住宅用地特例が外れて土地の税負担が上がる場合がある
4. 管理サービス 将来住む・使う可能性を残したい 現状を維持しつつ判断を先送りできる 月々の費用がかかり続け、根本解決にはならない
5. 自治体の空き家バンク 郊外・地方で一般市場では買い手がつきにくい 自治体経由で移住希望者などに情報が届く 成約までに時間がかかることが多く、価格も低めになりやすい

空き家バンクは、自治体が空き家情報を利活用希望者に紹介する仕組みで、国土交通省が全国の情報を横断検索できる「全国版空き家・空き地バンク」を構築しています。地方の実家で「近くの不動産会社に断られた」という場合の受け皿になります。

どの選択肢を選べばいい?決め方フローチャート

Q1. 家族の誰かが実家に住む・使う予定はありますか?
 ├─ はい → 【4. 管理サービス】+定期的な見回りで維持
 └─ いいえ → Q2へ

Q2. 建物はまだ使える状態ですか?(雨漏り・傾き・大きな損傷がない)
 ├─ はい → Q3へ
 └─ いいえ → 【3. 解体して土地活用】または
        「古家付き土地」として【1. 売却】(解体費は査定額と比較して判断)

Q3. 費用と手間をかけて、収益物件として持ち続けたいですか?
 ├─ はい → 【2. 賃貸】(リフォーム費用と賃貸需要を事前に確認)
 └─ いいえ → Q4へ

Q4. 実家は都市部・市街地にありますか?
 ├─ はい → 【1. 売却】(まず査定で相場を把握)
 └─ いいえ(郊外・過疎地) → 【1. 売却】の査定と並行して
                【5. 空き家バンク】への登録を検討

迷って当然です。どの道に進むにしても「査定で現在価値を知る」ことから始めるのが合理的です。売る・貸す・解体する、いずれの判断も金額の裏付けがあって初めて比較できるからです。

売却する場合はどう進める?(5ステップ)

  1. 名義(相続登記)の確認:亡くなった親の名義のままでは売却できません。2024年4月から相続登記は義務化されており、取得を知った日から3年以内に登記が必要です(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象)。
  2. 相場を知る:複数の不動産会社に査定を依頼し、価格の幅とその根拠を比べます。1社だけの査定では、その金額が妥当かどうか判断できません。
  3. 売り方を決める:建物の状態に応じて「そのまま中古住宅として売る」「古家付き土地として売る」「解体して更地で売る」を比較します。解体費用をかけるべきかは、査定時に不動産会社の意見を聞くのが近道です。
  4. 媒介契約・売却活動:査定内容と担当者の対応を見て依頼先を決め、売り出し価格を設定します。
  5. 引き渡しと税務処理:売却後は譲渡所得の申告が必要になる場合があります。相続した空き家の売却には最高3,000万円の特別控除(適用は2027年12月31日までの譲渡、1981年5月31日以前建築などの要件あり)という制度もあるため、要件に当てはまりそうかを含め、税務署や税理士に早めに確認してください。

査定は無料で受けられ、依頼したからといって売却が確定するわけではありません。「売るかどうかを決めるための材料集め」として使えます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 空き家の固定資産税は本当に6倍になるのですか?

特定空家・管理不全空家として「勧告」を受けると、土地の固定資産税を軽減している住宅用地特例(課税標準を200㎡以下の部分で6分の1に軽減)が外れます。課税標準ベースでは最大6倍ですが、実際の税額は負担調整措置などにより異なります。正確な影響額は自治体の固定資産税担当課や税理士に確認してください。

Q2. どのくらいの期間放置すると指定されますか?

「何年放置したら指定」という期間の基準はなく、判断されるのは建物や敷地の状態です。窓の破損や屋根の傷み、雑草の繁茂などを放置し、周囲に悪影響を及ぼすおそれがあると市区町村が判断すれば、期間にかかわらず管理不全空家として指導・勧告の対象になり得ます。

Q3. 相続登記がまだ済んでいなくても売却できますか?

できません。売却には亡くなった方から相続人への相続登記(名義変更)が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、施行前に相続した不動産も対象です。売却を検討するなら、まず登記の状況を確認しましょう。

Q4. 遠方に住んでいて実家の管理に通えません。どうすればよいですか?

短期的には空き家管理サービスや親族への依頼で最低限の管理(換気・通水・郵便物の回収・庭の手入れ)を確保しつつ、並行して売却・賃貸・空き家バンクなど「管理し続けなくてよい状態」に向けた検討を進めるのが現実的です。管理費用は解決までのつなぎと考え、出口の判断を先送りしないことが大切です。

まとめ

  • 空き家は全国900万戸・過去最多。実家の空き家問題は誰にでも起こる身近な問題です
  • 放置には「行政指定」「固定資産税の増額」「損害賠償」「防犯」「近隣トラブル」「資産価値低下」の6つのリスクがあります
  • 2023年の法改正で、行政は特定空家になる前の「管理不全空家」の段階から指導・勧告できるようになり、勧告で税の軽減特例が外れます
  • 選択肢は「売却・賃貸・解体して土地活用・管理サービス・空き家バンク」の5つ。どれを選ぶにも、まず査定で実家の現在価値を知ることが出発点です

「決めきれないから、とりあえずそのまま」が一番コストの高い選択になりがちです。まずは無料の査定で、実家の価値という判断材料を手に入れるところから始めてみてください。


本記事の数値・制度は下記出典に基づきます。誤りを見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。

参考文献

  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/g_kekka.pdf
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 概要」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621960.pdf
  • 国土交通省「改正空家法 ポイント解説(読替表付)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001732452.pdf
  • 国土交通省 報道発表「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる(令和7年3月31日時点調査)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000257.html
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
  • 国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
  • 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi
  • 国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
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この記事を書いた人

たたみさんのアバター たたみさん 実家じまいプロ 編集担当

「実家じまいプロ」の案内人(ペンネーム)。親の家とお墓を片づける手続きを、自治体の公式サイトを1件ずつ確認しながら書いています。窓口の運用は自治体ごとに違うため、申請の前には各自治体への確認をおすすめしています。

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